対米証券投資とは?
対米証券投資とは、アメリカの証券に投資された金額を示した指標のことです。英語で「Treasury International Capital System」と書かれ、TICもしくはTICSと略称されます。対米証券投資の役割は、アメリカへの資金流出入を測ることです。
そのため、貿易収支と比較することによって、国際収支のバランスを確認することができます。
そもそも「証券投資」とは、外国の株式・債権を保有することの投資を言い、それらの投資結果をまとめたものも同じく証券投資と呼ばれます。
これは国際収支の内訳の1つであり、この証券投資の他には「直接投資」という外国で企業の設立をしたり、外国企業を買収などをして経営権の獲得を目的として行うことです。
そのため、対米証券投資というのは、アメリカの株式をはじめとする各種証券に対する、アメリカ国外から行われる投資のことを指します。
この数値は、アメリカの銀行や、カストディアン、貯蓄金融機関などからデータを集計します。このデータ集計の煩雑さと、計測月の翌々月中旬の発表になることから、速報性が欠けるというデメリットを持っています。
これは国別での数字も発表がされます。そのため、アメリカへの資金の流れを把握する上では重要な指標とされています。
この指標が指す内容は、資金の流出入だけでなく、アメリカの貿易赤字・経済赤字をファイナンスできているかどうかの分析などにも使われ、それに伴い、ドルの売買の目安としても使われます。
これは毎月15日前後に、米国夏時間で日本時間の午前5時、冬時間で日本時間の午前6時に発表されます。
対米証券投資のFXにおける影響度・チャートの値動き
対米証券投資は、経常収支との比較に注目がされ、経常収支の赤字による資金流出よりも、対米証券投資が大きい場合に、アメリカへの資金フローが流入超と判断がされます。
売り越しがされた場合、ドル不安と認識がされ、ニューヨーク株式市場の下落、米国債券市場の下落が伴い、逆に買い越しがされた場合はその反対に、ドル高・株高・米債高のトリプル高、米国財政・通貨政策・金融への信頼感が得られているという認識がされます。
この「買い越し」の場合、米国の証券が、売られた分よりも多く買われたということになり、米国への投資意欲が旺盛になっていると言われます。
「売り越し」の場合は、米国の証券が、買われた分よりも多く売られているということになり、米国の経済に対する信認度の弱まりと認識されてしまいます。
また、この対米証券投資の数値が予想より高い場合には米ドルは買い材料とされ、予想より低い場合には売り材料と解釈されます。
これらのことから、対米証券の指標の数値は為替相場との相関性の高い指標であるといえるでしょう。
この対米証券投資との比較で使われる米国貿易収支では、イラク戦争などの国際情勢の影響も大きく、これにより恒常的な貿易赤字とされています。その貿易赤字を埋めているのが、この対米証券投資といわれています。
これにより、米国への資金流入によって貿易赤字をカバーできていれば、需給の面で米ドル買いや米ドル売りが相殺され均衡を保つことができます。ですが、資本流入が不足してしまうとその均衡が保てなくなり、米ドル売りの憶測を呼ぶことに繋がります。
まとめ
このように、アメリカに対する、アメリカ国外からの投資のことを対米証券投資といいます。
この指標の数値により、アメリカの経済の状況や信用度、アメリカに対する投資意欲を見ることができます。
米国貿易収支と併せて注目がされている指標ですが、結果の発表は翌々月になるため、速報性は低いです。
また、注目度の高さに反して、為替や株式市場に与える影響は比較的小さく留まることが多いといわれる経済指標です。
影響度は低いですが、アメリカという大きな国の経済状況をみるのに欠かせない指標なので、注視するべきだといえるでしょう。